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脱地球温暖化の戦略 
NGO、市民のイニシアティブ
   
   

「脱地球温暖化の戦略 NGO、市民のイニシアティブ」
 文/ 環境市民 代表理事 すぎ本 育生― ほんとうの、美しい星を実現するには ―


 安倍首相が、『美しい星50』を発表し、「温室効果ガスの世界全体の排出量を2050 年までに半減化する」という方針を出した。遅ればせながらも、日本政府もこのような考えに至ったことについて、評価したいのだが、その内容をみると疑問が一杯わいてくる。ここでは、日本政府や日本社会が、何をなすべきなのかを端的に述べよう。

1. 将来の社会ビジョン
 温室効果ガスを半減化した社会とは、どのような社会なのか、その具体像を示す必要がある。そのような社会で私たちはどのような、生活、仕事をしているのか、日本の自然はどのようになるのか、これを描く必要がある。 『美しい星50』ではこれが述べられていない。その記述内容から類推できるのは、世界中に原子力発電所が設けられ、燃料電池車が走り回る、一昔前のSF アニメの世界だ。 地球温暖化が提起している私たち人類社会の問題は、単なるエネルギーの使いすぎではない。その根底にある、物質欲にとらわれ果てしなき競争の中で、格差と争いをもたらす、現在の経済社会のあり方と価値観そのものである。この経済社会そのものを変革し、地球環境と調和し、多様性の中で他者と共存できる社会とは、どのようなものか描いていく必要がある。


2. 世界の前に日本の目標値
 『美しい星50』には、日本社会の目標は書かれていない。むしろ日本の技術で途上国を支援することが中心になっている。ドイツは2050 年まで自国で1990 年比80% 減、イギリスは同60% 減、フランスは同75% 減という長期目標を明確にしている。世界に50% 減を言うのなら、先進国たる自国はそれ以上の目標を掲げてそれを可能とする政策戦略を打ち出していくのが責任ある姿勢である。

3. 個々の努力だけに頼らない社会的システム
 日本の温暖化対策は、個人、企業、団体の自助努力にまかせられている。しかし、社会状況がその努力を困難にしたり、効果を限定的なものにしたりしている。例えば、誰もが自転車を快適に利用できる交通システム、飲料は全て再使用容器に入れられて販売されるシステムなど、個々の努力だけに頼らない制度が必要である。

4. 総合的なエネルギー戦略
 日本は、他国に比べて非常に多くのエネルギー開発予算をもっているにもかかわらず、そのほとんどを原子力に傾けている。自然エネルギーの技術的、そして社会的普及のためにこそ、その予算は使われる必要がある。そしてエネルギー関連企業の既得権益保護政策を改め、風力、太陽光、太陽熱、小型水力、地熱等の自然エネルギー利用が大きく促進される社会制度の構築が求められる。

5. 総合的な交通戦略

 都市部を除けば、日本の交通は完全な自動車依存になってしまっている。徒歩、自転車、公共交通機関を使って、日本のどこででも生活が無理なくできる交通体系を作り上げていくことは不可能ではない。またそのことが地域の商業活性、コミュニティーの再生にも大きな好影響をもたらす。

6. グリーンな市場を創造する
 環境を大切にする企業、商品が優先的に購入される社会的な仕組みが必要である。例えばごみの量が多い商品や、エネルギー消費量の多い商品には税金等がかかり、反対に環境的に優良な商品には補助金がでるような仕組みが考えられる。ヨーロッパ各国で導入されている炭素税は、自然エネルギーの普及に大いに役立っているだけではなく、得られた税収は社会保険料率の低減などに使われ雇用促進にも大きな効果をあげている。

7. 参画とパートナーシップ

 このような改革は、優れた為政者があらわれることによってできるのでなく、多くの人々の参画と合意によってなしえるものである。国、自治体で住民の主体的社会参画を促す制度化とその積極的運用が、社会を変えていく基盤として必要とされる。さらに参画とパートナーシップをすすめるためには、縦割り、保守的というお役所DNA を根源的に改める政策が求められる。


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