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(文 /事務局長 堀 孝弘)
この「美しい星50」のなかで、ひと際目を引くのが「2050年までに世界のCO2排出量半減」です。それを実現するための「革新的技術」の中には、実用化されてい
ない巨大技術もあります。「結局、最後は技術で解決すればよい」という考えが国民に広まらないか心配です。
その中の「先進的な原子力発電」には、「中小型の原子炉を開発し、途上国や島嶼国の発電需要に応える」という例もあります。最近、国内原発の過去様々な事故隠蔽が明らかになりました。放射性廃棄物や耐用年数の過ぎた原子炉等の処理だけでなく、日常の運営でも大きな問題を抱える原発を途上国に広めることによって、世界はCO2とは質の違った、とても大きなリスクと向き合わねばならなくなります。
ヨーロッパには国民的議論の末、脱原発に向けて進んでいる国もあります。技術の中には、太陽熱温水器や二重サッシのように革新的でなくても効果的な省エネ技術も多くあり、巨大技術開発や原発頼みではなく、今ある有効な技術を広く普及するための仕組みこそ重要です。自然エネルギーの普及にしても、2004年まで太陽光発電の導入(発電容量)で日本が世界のトップを走っていましたが、2005年ドイツに抜かれました。これも普及制度の差がもたらしたものです。
「提案2」の「原則1」、ポスト京都議定書では「主要な排出国が全て参加しなければならない」のはその通りで、ぜひ強く働きかけてもらいものです。「原則2」としてあげた、「各国の事情に配慮」「柔軟で多様性のある枠組み」もこれまでの国際会議等で確認されてきたことです。ただし、これが強調され過ぎると、新しい枠組みを実効性のないものにしかねないので注意が必要です。
気になるのが「提案3」です。ポスト京都議定書のリーダーシップをとろうとしても、まず自ら、京都議定書で世界と約束した削減目標を達成しなければ、世界から相手にされません。その京都議定書の履行期限(第一約束期間)が来年から始まります。
ご存知のように、日本は、CO2を主とする温室効果ガスを、2008〜2012年の第一約束期間(5年間の平均)までに、基準年比6%削減することになっています※。ところが逆に、2005年、基準年比8.1%増加していて、京都議定書の達成はかなり厳しい状況になっています。
※ CO2、CH4、N2O の3 種の基準年は1990 年。HFC、PFC、SF6 の3 種は1995
年。
京都議定書の達成に向けて、「1人1日1kg」のCO2削減を「国民運動」として家庭や職場に呼びかけるとのことです。しかし、これまで提案されている「こまめ暮らし」を積算しても1日610gCO2削減にしかならないため、不足分を補う新たな提案を国民から求めるとしています。しかし「こまめ暮らし」の提案はこれまでもなされてきたことであり、あらためて呼びかけても、大きなCO2削減効果は期待できません。
「提案1」で、低炭素社会のビジョンを示し、社会システムの変革が必要な旨、述べていますが、ヨーロッパには、すでにこれらを実現しつつある国もあります。それを考えると、将来ビジョンを「夢」として見せるだけでなく、その実現に向けた具体的な道筋の提示が必要な段階に入っていると言えます。ライフスタイルの変革はとても大切なことですが、一国の首相がすべきは、ビジョンに至る実現プロセスを具体的に示すことであって、こまめ暮らしの呼びかけではありません。
「美しい星50」全体をみると、長期目標は「革新的技術の開発」で実現し、直近の目標は「こまめ」で達成しようとしていますが、この両者にはとても大きな開きがあります。巨大技術開発の前に、実用化され有効であっても、一部にしか普及していない既存の環境技術を社会浸透させ、身近にする仕組みが重要であり、また、事業者や消費者の環境配慮行動を「当たり前」にするための様々な誘導策が必要です。もちろんこれらは、国が一方的に決めるのではなく、実現にあたって社会実験をはじめ地域で活動する様々な主体の協働活動が大きな役割を果たします。ところが、「美しい星50」から地域の果たす役割が見えてきません。
世界に向けて発する「日本モデル」と言うからには、海外の人々も「現実味」を感じるものでないといけません。「美しい星50」は、その「現実味」が欠けています。
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