まちの節電、こんなことできるはず 11 | 認定NPO法人 環境市民

まちの節電、こんなことできるはず 11

このコーナーは,2002年から2013年まで環境市民の事務局長を務めた堀孝弘が,在職時に書いたブログを掲載しています。

「全飲料自販機の消費電力は、100万kW級原発1基の発電量に匹敵する」って本当の話なの…?

  この「まちの節電、こんなことできるはず」シリーズの「8」以降、飲料自販機の経済性や消費電力について紹介しています。「10」では、実際の「どこにでもある飲料自販機」が要した年間消費電力を、身近な電化製品に例えてみました。飲料自販機の省エネが進んだとはいえ、まだまだ大きな電気を使っていることをお伝えできたかと思います。

今回は「どこにでもある飲料自販機」のデータをもとに、「日本中の飲料自販機が消費する電力量は、100万kW級原発1基が発電する電力量に相当」という例えを検証したいと思います。

本シリーズ「10」で例示させてもらった飲料自販機は、年間消費電力2,700kWh強。飲料自販機の台数は2011年3月末現在259万台※1ですので、掛け合わせると1年間で70.2億kWhを消費したことになります。
出力100万kW(設備容量)の原発を24時間、365日連続して動かした場合、87.6億kWhの電気をつくり出すことができます。ただし、あくまでこれは、1年間100%稼働した場合の数字です。定期点検などもありますので稼働率80%とした場合、70.1億kWhになります。

70.2億kWhと70.1億kWh、両者の数字は、気持ち悪いほどぴったり一致します。「日本中の飲料自販機が消費する電力量は、100万kW級原発1基が発電する電力量に相当する」という例えは正しいと思われます。ただ、例にあげた「どこにでもある飲料自販機」は、平均的な売上に達していないので※2、飲料自販機が消費する電力はもっと大きい可能性があります。その分、仮に設備稼働率をもっと高く設定して試算しても、「日本中の飲料自販機が消費する電力量は、100万kW級原発1基が発電する電力量に相当」という例えで、ほぼ正しいと思われます。

ここでもう読むのをやめてもらっても結構ですが、実際に原発が発電した実績から検証しましょう。2009年度の国内全原発の発電実績を経済産業省「平成21 年度の原子力発電所の運転実績について※3」で知ることができます。それによると設備容量110万kWの東通1号の年間発電実績は73.3億kWh、福島第一6号機は77億kWh、福島第二1号機は90.2億kWh、福島第二4号機は68.9億kWhなど、ばらつきはありますが、ほぼ近い数字になっています。

もうひとつ別のアプローチとして、全原発の発電実績を稼働基数で割ってみて1基あたりの発電量を算出し比べてみましょう。先に紹介した経産省の資料で、2009年全国の原発が発電した実績が2,775億kWhであることがわかります。全飲料自販機の消費電力を70.2億kWhとした場合、その39.6倍、ほぼ40倍となります。
この年54基の原発がありましたが、この年の全原発の時間稼働率が64.8%でしたので※4、実質稼働していたのは35基分と考えられます。となると、原発1基あたり79億kWhの発電となります。先にあげたように「例」に用いた飲料自販機の売上が平均に達してなかったので、1台あたりの消費電力はもう少し多いと考えられます。そのように考えると、全飲料自販機の消費電力と、原発1基の発電量はほぼ一致すると考えられます。

以下は補足です。
2009年は、2007年に発生した中越沖地震の影響で新潟県の柏崎刈羽原発の1〜5号機が停止していました。また、志賀原発1号機は、北陸電力が1999年に起きた臨界事故を隠蔽していたことが2007年に発覚し、以降運転停止になっていました。他、2009年8月に発生した駿河湾地震の影響で静岡県浜岡原発3、4号機が約2ヶ月の停止、5号機は、地震以降2009年度内は停止していました。また、泊3号機は、年度途中(2009年12月)からの営業運転開始、柏崎刈羽原発6号機は、年度途中で運転再開など、年間通じて稼働させていない原発もありました。さらには、老朽化した敦賀1号機、東海第二のように年間の稼働率(時間稼働率)が30%〜50%程度の原発もありました。そのようなことがあり年間稼働率が64.8%程度だったわけです。

 

※1 本シリーズ「8」参照
※2 本シリーズ「8」参照。飲料自販機の1台当りの売上は約91万円。「10」で紹介した飲料自販機の販売手数料は売上の20%で10万円弱。つまり売上は約50万円。
※3 「平成 21 年度の原子力発電所の運転実績について」経済産業省2010年4月16日プレスリリース資料
※4 2009年度の全原発の設備容量約4885万kW。全原発がフル稼働した場合の最大発電能力約4280億kWh。実際の発電実績2775億kWh。時間稼働率64.8% 設備容量と発電実績「※2」の資料から

写真は東京都多摩市の公共施設の飲料自販機。7月11日から9月末まで同市の公共施設の飲料自販機の約半数(32台)が販売を停止します(写真提供 NPO法人ごみ・環境ビジョン21)