深海からの贈り物 げんげ | 認定NPO法人 環境市民

深海からの贈り物 げんげ

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げんげ、のろげんげ、ばばあ
なんのこと?と思われた方が多いだろう。
逆におお!と思われた方は、そのおいしさを知っている方に違いない。

日本海側で、他の魚を獲る目的で、
たまたま獲れてしまう魚だという。
白い、まるでおたまじゃくしのようなつるんとした、
不思議な魚だ。

兵庫県豊岡市に住む友人が、
ブログに載せていたその魚を、
私は食べてみたくて仕方がなかった。

最近、深海魚の捕獲が相次いでいるが、
この魚も、深海魚の類いらしい。
と言っても、昔から食べられてきた、地元の味。
底引き網でよくかかるらしい。

出会いは突然にやってきた。
兵庫県立コウノトリの郷公園、
直売所の前に見たことがない白い魚が売られていた。
もしや? 期待が高まる。
「これ、ばばあですか?」
「いや、そういうんかな。げんげって呼んどるけど」

見れば見るほど、
不思議な色と形。
ヌルヌル、ツルツル。

不思議に美味しかった。
食感は、どう言ったら、いいのか。
上品な白身で、つるんと入ってしまう。

豊岡の人に聞いても、
好き嫌いの分かれるこの魚、
どうやら、たまたま獲れるもので、
さほど食卓に上がるものでもないらしい。

値段も安い。
八ぱいで300円。
横に並ぶ、イカは一ぱい100円。

げんげとは、もともと、下の下、
雑魚の扱いで、地元にしか出回らないという。

そうやって、なにも無駄にせずに、
食べてきた。
そんな風土が、垣間見られたように思う。

げんげの一種、のろげんげを但馬地方では、
ばばあと呼んでいる、
そう友人は教えてくれた。

そんな不思議な名前をつけて、
昔から、この地方では、
愛されてきた食なのだろうか。
「今日の夕飯は、ばばあのお吸い物だよ」
そんな会話が交わされるのか。
よそから来た人は、ギョッとするに違いない。

友人に写真を見せると、
私の買ったのは、げんげではあったが、
のろげんげではないらしい。
残念ながら、ばばあではなかった。

また、いつか、ばばあに出会える日を楽しみに。

(ち)

※イラストはげんげではありません。