京都の町並みを守るのは自治体ではなく市民 | 認定NPO法人 環境市民

京都の町並みを守るのは自治体ではなく市民

このコーナーでは、ウェブやメールマガジンの企画運営を行っている「電子かわら版チーム」メンバーのコラムを紹介しています。一緒に企画運営をしたいボランティアも随時募集中です。関心のある方は京都事務局まで。

環境市民も事務所を構える京都市内では、
古い民家が取り壊されては更地になり、
そこに別の建物の工事が始まる光景をあちらこちらで見かけます。

以前のコラムの続編です。
「伝統と経済のぶつかるところ(前編)」
「伝統と経済のぶつかるところ(後編)」

西陣で町家に住み、
豆とスパイスのお店を営む楽天堂さんの隣家が取り壊されることになりました。
その取り壊し予定の家も町家で、周辺は町家が数軒軒を並べる地域です。
楽天堂さんの隣家を買い取った不動産屋のチラシによると、
その土地を更地にして3階建ての家を建てるプランが示されていたようです。

軒を並べる町家の一角を取り壊して別の建物ができると、
日光が遮られたり風の抜け道が阻害されたり、周囲に悪影響を及ぼします。
何より楽天堂さんはその取り壊される隣家が
長年丁寧に手入れされ使われてきた歴史を惜しんでいました。

楽天堂さんは、
隣家を買い取った不動産屋に町家のままで売り出すように働きかけ、
京都市にも保存できないか問い合わせたものの、
どちらからも相手にされなかったそうです。
いよいよ取り壊しの工事が始まる数日前、
楽天堂さんは知人に借金の申込をしたり自己資金をかき集めたりして、
その家を買い取ることに決めました。

間口の狭いお店で職住一体型の暮らしをして、
大きな商いをされているわけでもない楽天堂さんが、
数か月間悩みできる限りを尽くした後の大きな決断でした。
その決断にご近所の方々は店主さんの手を取って、
涙を流して喜ばれたそうです。

不動産屋は高値で売り抜けたいだけで、
観光都市と称する京都市は街並みを守らない中、
一人の市民の努力によって景観が守られています。

今回のコラムの筆者は、東山区の小さな町家で10年暮らしていましたが、
今後家族が増えると手狭になるので、少し広い家を探していました。
ところが、京都市内はどこも家賃が高く、長岡京市へと転居しました。
2LDKのアパートが、
京都市内中心部よりも所によっては5万円以上も安くなります。
このままでは京都市内に庶民は住めなくなってしまいそうです。
総務省が公表している住民基本台帳移動報告によると、
実際に京都市は2017年から2年連続で男女とも転出超過となっています。

この現実が物語るものは、果たして明るい未来なのでしょうか。
(はるかぜ)

地域に暮らし、周囲と良い関係を築きながらその地域を守る楽天堂さんは、
ぜひ応援したいお店です。
楽天堂さんの看板商品である豆は、環境市民的にもお勧めの食材です。
世界中の人がお肉を食べると食糧危機につながりますが、
お肉の代わりに豆料理を増やすと環境への負荷は小さくなります。
楽天堂