差別解消は社会全体で取り組むもの | 認定NPO法人 環境市民

差別解消は社会全体で取り組むもの

このコーナーでは、ウェブやメールマガジンの企画運営を行っている「電子かわら版チーム」メンバーのコラムを紹介しています。一緒に企画運営をしたいボランティアも随時募集中です。関心のある方は京都事務局まで。

株式会社DHCが昨年11月から公式ウェブサイトに掲載していたひどい差別文章は、
多くの批判を受けながらも約半年間そのままになっていました。

問題と考える市民が声を上げ、直接的な抗議や不買運動に加えて、
Twitterでは「#差別をするDHCの商品は買いません」という
ハッシュタグデモがトレンド入り。
さらにはDHCと取引のある小売業や自治体に働きかけることで、
潮目が変わり出しました。
大きかったと見られるのは、
流通大手のイオン株式会社がDHCの会社としての姿勢を問うたことです。
5月末をもってDHCのサイトから問題の文章は削除されました。

これによりイオンは
「人権に関する不適切な文章が掲載されていたことについて非を認め、発言を撤回すること」
「今後同様の行為を繰り返さないこと」
を確認したとして、取引継続を決めたとのこと。
株式会社ディーエイチシーに対する当社の対応について(PDF)

しかしDHCのウェブサイトを見てみると、
問題の文章が掲載されていた「ヤケクソくじについて」は、
ただのくじの配布終了の案内に変わっていました。
あれが不適切発言であったという認識も撤回も謝罪もありません。
これでは、大手に取引停止されそうになって困ったから、
そこだけポーズを見せたと言われても仕方がないのではないでしょうか。

興味深いのは自治体の対応の方です。
問題の発覚時点では21の市町がDHCと包括連携協定を結んでいました。
メディアの取材に対し、6割以上が協定を
「見直さない・検討していない・コメントなし」と回答していました。
それがここに来て、市民からの苦情があったこともあり、
協定の解除や凍結の動きが広まっています。
たとえば茨城県下妻市は「企業としての公式見解を外部公表しないのは、
人権を尊重する市の立場から容認できない」という理由で解約を通知しています。
一方で「本市には影響がない」として対応をしない自治体も。

2016年に成立したヘイトスピーチ解消法では、第3条に
「国民は(中略)不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならない」
と定めています。
個人だけでなく、自治体も企業も、
社会的責任を果たすためにはこの努力義務に取り組まねばなりません。
明白な差別扇動を行った相手とは契約を見直すのがまっとうな態度ではないでしょうか。

コンビニにDHCとの取引停止を求める市民団体が集めていた署名は
1カ月で5万筆に上りました。
6月24日にコンビニ各社へ提出されるそうです。
残念ながらイオン系列のミニストップ株式会社は署名の受け取りを拒否しているとのこと。

私たち、日本の社会全体は、差別に対して毅然と対応できるのか。
公式ウェブサイトからこっそり消されただけで幕引きとしてはなりません。
今後の動きに注目し、行動していきましょう。
(げの字)

<参考>
Buzzfeed「DHC会長の在日コリアン差別、協定解消の自治体も。
『容認できない』『社会的影響は大きい』21市町に独自調査


法務省「ヘイトスピーチ、許さない
ヘイトスピーチ解消法(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の
解消に向けた取組の推進に関する法律)について

DHCとの取引の停止をコンビニ各社に求める会(change.org)
DHC商品のコンビニからの撤去、および同社との取引中止を求めます

<執筆者紹介>
ペンネーム:げの字
環境市民の設立3年目からの会員で、かつて事務局スタッフとして広報や環境教育を担当。
プロジェクト運営支援などで(スポーツバイクで)駆け回る日々を過ごす。
ベジ料理と家庭菜園が趣味。