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ここが問題!安倍元首相提唱「美しい星50」

2007年7月

2007 年5 月24 日、安倍晋三元首相は、第13 回国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社主催)の晩餐会で、地球温暖化問題に係る戦略として「美しい星へのいざない 〜3 つの提案、3 つの原則〜」と題した演説(以下、美しい星50)を行いました。この中では「2050 年に世界のCO2 排出量を現在の半分に」などの提案が行われ、日本の首相も環境問題でリーダーシップを発揮か、と言いたいところですが、温暖化防止の動きを実効あるものにするにはいくつもの課題があります。ここでは、環境市民が15年にわたる、実践から提言活動を通して得た視点をもとに、どこが課題でどうすればよいのかを提案しています。
※会報誌「みどりのニュースレター」7月号の特集:ここが問題!安倍元首相「美しい星50」ダウンロードをウェブサイトで公開するものです。(一部編集)
 

安倍 晋三首相提唱「美しい星50」の概要

                                                                                                 (文/事務局長 堀 孝弘)

「美しい星」は、三つの提案からなっています。

「提案1」で長期戦略として、「世界全体のCO2(二酸化炭素)排出量を現状と比べて2050年までに半減する」ことを世界共通の目標とすることを提案し、そのために精力的に各国に働きかけることを表明しています。気になるのは、「2050年までに半減」をどのように実現するかですが、その柱として「革新的技術の開発」をあげ、「革新的ゼロ・エミッション石炭火力発電」「革新的太陽光利用技術」などの例示と並んで「先進的な原子力発電」があげられています。
また長期ビジョンとして「低炭素社会」を提起しています。生活の豊かさとCO2削減が両立し、自然との共生、公共交通による効率的な移動システム、コンパクトなまちづくりなどを実現するため、生活様式や社会システムの変革も打ち出していく旨を表明しています。

「提案2」は中期戦略で、ポスト京都議定書の考えとして「3つの原則」を提案しています。まず、京都議定書の次の枠組みは、京都議定書より大きく前進したものであるべきとの前提に立ち、そのうえで「原則1」として、アメリカや中国、インドなど「主要な排出国が全て参加しなければならない」ことをあげ、「原則2」で、「各国の事情に配慮した柔軟かつ多様性のある枠組みとすること」、そして「原則3」で、「省エネなどの技術を活かし、環境保全と経済発展を両立すること」をあげています。

「提案3」では、「京都議定書の目標達成に向けた国民運動の展開」を提案しています。京都議定書の第一約束期間(2008〜2012年)の開始を来年に控え、日本が世界と約束した温暖化効果ガスの削減目標6%の実現に向け、政府の率先行動だけでなく「国民運動」を展開するというものです。
その「国民運動」とは、「1人1日1kg」のCO2削減に努めるよう家庭や職場に呼びかけるというもので、CO2削減のためのいくつかの行動が例示されていますが、これまで環境省から示されていたシャワーを1日1分減らすなど「こまめな暮らしの提案」を繰り返したものでした。
また、安倍首相は、これらの取り組みを「日本モデル」と名付け、世界に向けて発信するとしています。
  ※「美しい星50」についての資料はこちら
  

 

「美しい星50」 ここが問題

安倍首相の「美しい星50」で例示された「こまめ暮らし」は、個人の行動として大切なことですが、個々の実践に期待するだけでは決して将来ビジョンへの到達も京都議定書の達成もできません。必要なのは、環境に配慮した生活や事業活動が当たり前になるための制度構築です。その制度構築に向けて何が必要か、「こまめ暮らし」を「社会の課題」に置き換えてみると見えてきます。 
                                                                                                     (文 /事務局長 堀 孝弘) 

●エコ製品への買い替えをすすめましょう

これを「社会の課題」に 置き換えると…
→「多くの人がエコ製品を選ぶようになる仕組みをつくろう」


購入・買い替えの際、環境にも配慮して製品を選ぶことを「グリーン購入」と言います。家電製品や自動車など、製品によって消費電力や燃費に大きな差があります。製造時や廃棄時のエネルギー消費より、使用時のエネルギー消費の方が圧倒的に大きいことを考えると、消費電力や燃費効率のよいエコ製品の選択は、とても有効なCO2削減策となります。しかし、概して省エネ性能が優れた製品は価格が高く、それが普及のネックになっています。そのため「呼びかけ」だけではエコ製品は普及し
ません。
そこで環境税など、エコ製品が購入しやすくなる仕組みが必要です。環境税については誤解もあるようですが、海外で施行されている環境税の多くは、製品・サービスの環境負荷の大きさに応じて課税されています。例えば、電化製品であれば、省エネ性能が優れた製品は税率が低く(または非課税に)、逆に省エネ性能がよくない製品の税率を高くするなど、エコ製品や環境技術が社会に広まり易くする手段として活用されています。このような仕組みを採りいれることで、メーカーの省エネ技術の開発努力も利益に結びつきやすくなりますし、海外製品に対する競争力も高くなります。

□地域の市民、事業者、行政の協働活動が、全国に波及、 国の制度にも影響を与えた「省エネラベル」
2006 年10 月、経済産業省は家電製品の省エネ性能表示ラベルを定め施行しました。この原型は2002 年度以降、東京や京都で、市民団体、行政、事業者の協働のもと考案し、店頭での効果測定などを経て、各地の市民団体や行政、事業者の協力のもと全国に普及した「省エネラベル」です。
□環境市民では、「環境税」の効果や課題について、「みどりのニュースレター2006 年12 月号」ダウンロードで特集しています。


●シャワーの時間を1 日1 分減らしましょう
これを「社会の課題」に置き換えると…
→「自然エネルギーの活用や熱利用の効率化を進めましょう」

「シャワーの出しっ放しを1 分減らせば、1 日74 グラムのCO2 排出量が減る」ということですが、そもそも出しっ放しをしていない人には関係のない話!  自然エネルギーの活用といっても、太陽光発電のような高価なものでなく、太陽熱温水器のような廉価な既存技術で、家庭のエネルギー消費を大きく下げることができます。また、燃料電池やガスによるコージェネレーション発電も、熱利用効率を大きく高めます。これらを一般家庭に普及することによって、シャワーの時間を減らさなくても、CO2 排出量を大幅に減らすことができます。
現状、これらの技術は、私たちの社会に「点」のようにしか普及していません。これを面的に広めることが重要です。そのため、先にあげた環境税(炭素税)の創設など、社会の仕組みを変えていくことが必要です。

□自然エネルギーを市民の力で普及する「グリーンファンド」
市民の力で地域から自然エネルギーを普及させていく活動があります。例えば、きょうとグリーンファンドが進めている「市民参加 おひさま発電所設置事業」や、北海道グリーンファンドなどの市民風車事業があります。
NPO 法人 きょうとグリーンファンド
NPO 法人 北海道グリーンファンド

●マイバッグを持ち歩き、過剰包装を断わりましょう

これを「社会の課題」に置き換えると…
→「レジ袋有料化の法制化を進めよう」

現在、一部の地域で地元行政や市民団体と協定などを締結して、自主的にレジ袋の有料化を採りいれるスーパー等があらわれてきました。とても意義深い活動で、「レジ袋はタダではない」という認識を社会に広めることにつながるでしょう。ただし、自主的な活動では事業者やそれを支援する市民団体の負担も大きく、やがて限界もきます。マイバッグ持参でレジ袋を減らさないと温室効果ガス削減目標が達成できないのなら、「呼びかけ」ではなく法による社会のルールとするべきです。京都で
のイオンやイズミヤをはじめとした「レジ袋有料化(削減)協定」にも参加しています。
□「レジ袋有料化」については、「みどりのニュースレター2007 年6月号」ダウンロードで特集しています。

●ごみの分別を徹底して、リサイクルをすすめましょう
これを「社会の課題」に置き換えると…
→「使い捨て容器包装を抑制し、リユース容器に転換できる制度づくりを進めよう」

ごみの分別を徹底し、廃プラスチックをリサイクルして焼却量を減らすと1 日52g のCO2 削減になるとのことです。ただし、ごみ処理の優先順位として、国は法律で「発生抑制」や「再使用(リユース=何度も使う)」をリサイクルより高く位置づけています※。しかし、缶やペットボトル、その他プラスチックなど、使い捨て容器包装は増えるにまかされている状態で、分別回収とリサイクルによる自治体負担は年々大きくなっています。一方、温暖化対策を精力的に進めているドイツには、清涼飲料やビールのリユース容器使用率が72% を下回らないよう求める規定があります。「増えるにまかせてリサイクル!」では、温暖化効果ガスの削減につながりません。
※循環型社会形成促進基本法2000 年制定


□「容器包装リサイクル法」の問題点については、「みどりのニュースレター2006 年9 月号、10 月号」ダウンロードで特集しています。


環境市民では提案・提言だけやなく、地域での実践活動にも力を入れています。その成果は「みどりのニュースレター」などで社会発信しています。


この「美しい星50」のなかで、ひと際目を引くのが「2050年までに世界のCO2排出量半減」です。それを実現するための「革新的技術」の中には、実用化されてい ない巨大技術もあります。「結局、最後は技術で解決すればよい」という考えが国民に広まらないか心配です。
その中の「先進的な原子力発電」には、「中小型の原子炉を開発し、途上国や島嶼国の発電需要に応える」という例もあります。最近、国内原発の過去様々な事故隠蔽が明らかになりました。放射性廃棄物や耐用年数の過ぎた原子炉等の処理だけでなく、日常の運営でも大きな問題を抱える原発を途上国に広めることによって、世界はCO2とは質の違った、とても大きなリスクと向き合わねばならなくなります。


ヨーロッパには国民的議論の末、脱原発に向けて進んでいる国もあります。技術の中には、太陽熱温水器や二重サッシのように革新的でなくても効果的な省エネ技術も多くあり、巨大技術開発や原発頼みではなく、今ある有効な技術を広く普及するための仕組みこそ重要です。自然エネルギーの普及にしても、2004年まで太陽光発電の導入(発電容量)で日本が世界のトップを走っていましたが、2005年ドイツに抜かれました。これも普及制度の差がもたらしたものです。

「提案2」の「原則1」、ポスト京都議定書では「主要な排出国が全て参加しなければならない」のはその通りで、ぜひ強く働きかけてもらいものです。「原則2」としてあげた、「各国の事情に配慮」「柔軟で多様性のある枠組み」もこれまでの国際会議等で確認されてきたことです。ただし、これが強調され過ぎると、新しい枠組みを実効性のないものにしかねないので注意が必要です。
気になるのが「提案3」です。ポスト京都議定書のリーダーシップをとろうとしても、まず自ら、京都議定書で世界と約束した削減目標を達成しなければ、世界から相手にされません。その京都議定書の履行期限(第一約束期間)が来年から始まります。
ご存知のように、日本は、CO2を主とする温室効果ガスを、2008〜2012年の第一約束期間(5年間の平均)までに、基準年比6%削減することになっています※。ところが逆に、2005年、基準年比8.1%増加していて、京都議定書の達成はかなり厳しい状況になっています。
※ CO2、CH4、N2O の3 種の基準年は1990 年。HFC、PFC、SF6 の3 種は1995 年。

京都議定書の達成に向けて、「1人1日1kg」のCO2削減を「国民運動」として家庭や職場に呼びかけるとのことです。しかし、これまで提案されている「こまめ暮らし」を積算しても1日610gCO2削減にしかならないため、不足分を補う新たな提案を国民から求めるとしています。しかし「こまめ暮らし」の提案はこれまでもなされてきたことであり、あらためて呼びかけても、大きなCO2削減効果は期待できません。
「提案1」で、低炭素社会のビジョンを示し、社会システムの変革が必要な旨、述べていますが、ヨーロッパには、すでにこれらを実現しつつある国もあります。それを考えると、将来ビジョンを「夢」として見せるだけでなく、その実現に向けた具体的な道筋の提示が必要な段階に入っていると言えます。ライフスタイルの変革はとても大切なことですが、一国の首相がすべきは、ビジョンに至る実現プロセスを具体的に示すことであって、こまめ暮らしの呼びかけではありません。

「美しい星50」全体をみると、長期目標は「革新的技術の開発」で実現し、直近の目標は「こまめ」で達成しようとしていますが、この両者にはとても大きな開きがあります。巨大技術開発の前に、実用化され有効であっても、一部にしか普及していない既存の環境技術を社会浸透させ、身近にする仕組みが重要であり、また、事業者や消費者の環境配慮行動を「当たり前」にするための様々な誘導策が必要です。もちろんこれらは、国が一方的に決めるのではなく、実現にあたって社会実験をはじめ地域で活動する様々な主体の協働活動が大きな役割を果たします。ところが、「美しい星50」から地域の果たす役割が見えてきません。
世界に向けて発する「日本モデル」と言うからには、海外の人々も「現実味」を感じるものでないといけません。「美しい星50」は、その「現実味」が欠けています。

 

 

「脱地球温暖化の戦略 NGO、市民のイニシアティブ」
ほんとうの、美しい星を実現するには 

文/ 環境市民 代表理事 すぎ本 育生


安倍首相が、『美しい星50』を発表し、「温室効果ガスの世界全体の排出量を2050 年までに半減化する」という方針を出した。遅ればせながらも、日本政府もこのような考えに至ったことについて、評価したいのだが、その内容をみると疑問が一杯わいてくる。ここでは、日本政府や日本社会が、何をなすべきなのかを端的に述べよう。

1. 将来の社会ビジョン

温室効果ガスを半減化した社会とは、どのような社会なのか、その具体像を示す必要がある。そのような社会で私たちはどのような、生活、仕事をしているのか、日本の自然はどのようになるのか、これを描く必要がある。 『美しい星50』ではこれが述べられていない。その記述内容から類推できるのは、世界中に原子力発電所が設けられ、燃料電池車が走り回る、一昔前のSF アニメの世界だ。 地球温暖化が提起している私たち人類社会の問題は、単なるエネルギーの使いすぎではない。その根底にある、物質欲にとらわれ果てしなき競争の中で、格差と争いをもたらす、現在の経済社会のあり方と価値観そのものである。この経済社会そのものを変革し、地球環境と調和し、多様性の中で他者と共存できる社会とは、どのようなものか描いていく必要がある。
 

2. 世界の前に日本の目標値

『美しい星50』には、日本社会の目標は書かれていない。むしろ日本の技術で途上国を支援することが中心になっている。ドイツは2050 年まで自国で1990 年比80% 減、イギリスは同60% 減、フランスは同75% 減という長期目標を明確にしている。世界に50% 減を言うのなら、先進国たる自国はそれ以上の目標を掲げてそれを可能とする政策戦略を打ち出していくのが責任ある姿勢である。

3. 個々の努力だけに頼らない社会的システム

日本の温暖化対策は、個人、企業、団体の自助努力にまかせられている。しかし、社会状況がその努力を困難にしたり、効果を限定的なものにしたりしている。例えば、誰もが自転車を快適に利用できる交通システム、飲料は全て再使用容器に入れられて販売されるシステムなど、個々の努力だけに頼らない制度が必要である。
 

4. 総合的なエネルギー戦略

日本は、他国に比べて非常に多くのエネルギー開発予算をもっているにもかかわらず、そのほとんどを原子力に傾けている。自然エネルギーの技術的、そして社会的普及のためにこそ、その予算は使われる必要がある。そしてエネルギー関連企業の既得権益保護政策を改め、風力、太陽光、太陽熱、小型水力、地熱等の自然エネルギー利用が大きく促進される社会制度の構築が求められる。
 

5. 総合的な交通戦略

都市部を除けば、日本の交通は完全な自動車依存になってしまっている。徒歩、自転車、公共交通機関を使って、日本のどこででも生活が無理なくできる交通体系を作り上げていくことは不可能ではない。またそのことが地域の商業活性、コミュニティーの再生にも大きな好影響をもたらす。

6. グリーンな市場を創造する

環境を大切にする企業、商品が優先的に購入される社会的な仕組みが必要である。例えばごみの量が多い商品や、エネルギー消費量の多い商品には税金等がかかり、反対に環境的に優良な商品には補助金がでるような仕組みが考えられる。ヨーロッパ各国で導入されている炭素税は、自然エネルギーの普及に大いに役立っているだけではなく、得られた税収は社会保険料率の低減などに使われ雇用促進にも大きな効果をあげている。

7. 参画とパートナーシップ

このような改革は、優れた為政者があらわれることによってできるのでなく、多くの人々の参画と合意によってなしえるものである。国、自治体で住民の主体的社会参画を促す制度化とその積極的運用が、社会を変えていく基盤として必要とされる。さらに参画とパートナーシップをすすめるためには、縦割り、保守的というお役所DNA を根源的に改める政策が求められる。


 

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