FRONTLINE 2002「市民参画で誕生したエコロジーセンター」 | 認定NPO法人 環境市民

FRONTLINE 2002「市民参画で誕生したエコロジーセンター」

市民参画で誕生したエコロジーセンター
— 真価が問われるのはこれから

杦本 育生(環境市民代表)

京都市の「京エコロジーセンター」が4月21日に開所を迎えた。すでに全国各地の自治体に、環境学習や環境活動の拠点的な施設が活動をしており、目新しさはない。しかし、このエコロジーセンターには、いくつかの大きな特徴がある。その一番のものが企画の段階から、市民参画がなされてきたということである。市内の環境団体、消費者団体、ボランティア団体、地域団体、事業者団体、学識者等が主体的な役割を、開館まで継続して行ってきた。この点では全国の同趣旨の施設の中でも、特筆ものである。

構想調査から

エコロジーセンターの必要性が論議されはじめたのが1994年。京都市廃棄物減量等審議会の委員である高月紘さん(京都大学環境保全センター教授)や私などが、市の職員とともに、ごみ減量の実践普及、環境教育、実践的な調査研究の場としてセンターが必要だという議論を同審議会で行った。そして95年度の市への答申に、その趣旨を明記した。96年度に市清掃局から「エコロジーセンター構想調査」がエコロジー研究会に対して委託される。この研究会のメンバーは廃棄物減量等審議会の委員であったが、その調査事務局は環境市民が担当した。国内の先進事例や環境市民が独自に調査した海外事例も活かして、96年3月に「エコロジーセンター構想調査報告書」をまとめた。

COP3を記念して

同時期に、京都市衛生局環境保全室でも環境学習の場作りが内部的に検討されていた。ただ両者の構想のすり合わせや、予算措置の問題で96年度には進展は見られなかった。

97年に気候変動枠組条約第三回締約国会議(COP3)が開催され、市民団体等からの強い要望も出され、その記念として「京都市環境学習・エコロジーセンター(仮称)」の設置が意思決定された。また、清掃局及び環境保全室の構想を統合するため有識者による基本構想策定懇話会を設置。98年3月「環境学習・エコロジーセンター(仮称)基本構想」がまとめられた。

研究会の誕生

98年度には京都市清掃局と環境保健局環境保全室が組織変更で環境局として統合され、エコロジーセンターの動きも本格化し、基本計画の策定が同年度になされた。その計画策定に市民参画を採り入れるため「基本計画策定に係る研究会」を11月に設置した。研究会のメンバーは「京のアジェンダ21フォーラム準備委員会」と「京都市ごみ減量推進会議」の会員である市民団体、事業者団体、学識者中心に19名であり、そのコーディネートは環境市民が行った。この基本計画の段階で、センターの基本コンセプトである「人がいる」「本物をみせる」「パートナーシップ」などが議論された。

設計段階にも市民参画

99年度には上記の研究会を「京都市環境学習・エコロジーセンター(仮称)研究会」と改称。市、設計事業者と研究会との意見交換により基本設計、詳細設計、展示設計をつめていった。この設計段階での市民参画は、非常に意味がある。通常の市民参画はこの段階が抜けて、計画のあとは活動(開館準備も含む)段階へ飛んでしまう。活動しやすい施設にするには、建物や展示施設の設計の段階での市民の意見が欠かせない。建物設計を担当した日建設計の技術者の「公共施設で、将来のユーザーである市民の意見を直接反映できることは少ない。今回はほんとうに良かった」という発言が忘れられない。

展示づくりにも

2000年度には「京都市環境学習・エコロジーセンター(仮称)」事業検討委員会が設置されたが、審議会的な役割であった。この年にはどのような事業プログラムに取組むべきかという調査を、市から環境市民が受けて、市内の市民団体のヒアリングに基づいた報告書を作成した。また館内で学習に用いる展示展開の具体化について、業者である丹青社から専門的アドバイスと資料取得について環境市民に求められた。2001年度半ばまでアドバイスにとどまらない、具体的なデータ調査や展示物のコンセプトづくりにかかわることとなった。丹青社からは事業委託金を頂いたが、作業量は膨大になり丹青社から「(無償)ボランティア同然で活動していただきありがたかった」と言われる状態であった。

運営組織をめぐる混乱

この年度末には、市がセンターの運営を「(財)京都市環境事業協会」に委託すると決めたが、研究会にも何の相談もなく、築いてきたパートナーシップを破壊する行為であると研究会メンバーから強い批判が続出した。それに対して市は陳謝し、また開所後も含めて市民とのパートナーシップを基本とするということを確認した。

2001年度には研究会を改組して企画委員会とする。事業検討委員会のもとでより具体的な検討と市への意見提案を行った。その段階での主要な意見や提案は、開館準備と開館後の運営組織に関してであった。

開設準備

また、運営ボランティア養成講座を環境共育事務所カラーズが受託し、2期にわたり計100名のボランティア養成連続講座とフォローアップ講座が実施された。また、一般来館者用映像の「地球温暖化を防ぐ、私たちにできること」の作成を受託したNHKメディアプランから、原案作成とアドバイスを求められ、企画委員会有志と環境市民が協力した。ビオトープのコンセプトの具体化と設計についても、市及び設計・建設事業者からアドバイスを求められ、片山雅男さん(夙川女子短期大学助教授)と環境市民が協力した。そして4月21日に開催された開所イベントも、京のアジェンダ21フォーラムの能村聡さんがボランティアで準備コーディネートし、いろいろな市民団体が主体的に参画することによって成功をおさめた。

ほんものになれるかは、これから

このような市民参画がなかったなら、いまのエコロジーセンターは全く違っていたものになっていたであろう。実際に各地にある同趣旨の施設のかなりが、市民や市民団体の積極的な参加が得られず機能を果たしていない。しかし市民参画は今後こそ、より大切である。京エコロジーセンターは、類似施設にあるようなバーチャルリアリティー(実物ではなくコンピュータ映像を用いた仮想現実)を多用したものとせず、人がいて本物を体験し、実生活や地域活動に役立てていくことを目的としている。そのためには、ボランティア、市民団体、事業者団体などが主体的に参画できる、運営とその根底にあるパートナーシップ、環境問題への基本的理解が必須である。4月に雇用されたスタッフは事務職も含めてこのことが特に求められている。2000年度末におこった運営形態の混乱の反省から「京エコロジーセンター事業運営委員会」が研究会、企画委員会の流れを受け、センターのある地域の団体などを加えて発足した。この委員会が実質的にセンターの活動と運営の基本を担っていくことにはなっている。しかしこの委員会が市民に開かれた運営がなされ、かつ形骸化されることのないようにしていかねばならない。京エコロジーセンターが日本の先進的な取組みになるかどうかは、まさにこれからにかかっている。