8 グリーンコンシューマー活動の現代的課題 | 認定NPO法人 環境市民

8 グリーンコンシューマー活動の現代的課題

文:杦本 育生

グリーンコンシューマー活動は、10年前の黎明期からみれば格段の広がりを見せている。しかしグリーンコンシューマーとして消費行動をほぼ常に実現している人は、1%に達した程度ではないかと推察される。それでも10年前のppmオーダーからみれば大きな進展であろう。また常にではないが、ある程度グリーンコンシューマー的な買い物行動や潜在的なグリーンコンシューマーは、電通の上記調査や自治体によって行なわれた調査によってもかなりの割合に達している。現在においても、グリーンコンシューマー活動は前述したとおり、流通事業者の品揃えや環境の取組への影響、グリーン購入活動への影響、自治体の対住民向け行政への影響、そして小論では具体的に言及しなかったがメーカーのエコロジー製品企画やグリーン購入法の制定にも間接的な影響を与えている。グリーンコンシューマーが10%程度を占めるようになると、ある程度はグリーンコンシューマー的な買い物をする人がその数倍に達すると考えられる。そのとき企業や自治体の主体的な努力と相乗的に経済システムそのものを変えていく力になると考えられる。そのような社会を実現するためには、まだまだ多くの課題があるが、現代時点で整理すると次のようなことが考えられる

(1) メーカーの評価へ
日本のグリーンコンシューマー活動がガイドブックにしてきた対象は流通企業である。本来はメーカーもその対象であることはいうまでもないが、前述した理由によりできていない。ただ、この数年間「環境報告書」を作成するなど環境情報を分かりやすく前向きに取組んでいるメーカーが増加している。あと数年内にメーカーを対象とした新しいガイドを作成することも可能になるであろうし、グリーンコンシューマー活動している団体にその対応が必要とされる。

(2)グリーンコンシューマーの定義の混乱
グリーンコンシューマーという活動を、商品、店舗やメーカーの選択ではなく、エコロジーなライフスタイルというような意味で、自治体や環境団体等で使用されている事例が見受けられることが多くなってきている。これでは、我慢する活動とか出口対策的な活動までグリーンコンシューマー活動ということになり、活動本来の特徴が生かされなくなり、また事業者ヘの影響力も軽視されることになる。グリーンコンシューマーという活動を厳格に定義づける必要はないが、本来の意味とは異なる活動に使うことは避けるようにしなければならない。

(3)エコロジー製品の考え方の相違
メーカーやスーパーが企画作成する、いわゆるエコ製品と、グリーンコンシューマー活動を主体的にすすめている環境団体等が考えているエコ製品とでは、そのコンセプトにずれが生じている。一例をあげると、事業者が企画される製品の中にはアルミ缶やペットボトルをリサイクルしたものがかなり見受けられるが、環境団体はそれら容器の大量使用そのものが問題であり、リサイクル使用することはむしろそのような容器の大量使用の免罪符になりかねないと考えている。どちらが正しいという問題ではないが、互いの考え方、情報をもっと交流し、よりコンセンサスの得られる製品づくりを事業者が行うようにしていく必要がある。

(4)店頭情報
グリーンコンシューマーに熱心に取り組んでいる人でも、事前にガイドブックでチェックしていてもわざわざ買い物時にガイドブックを持参することは少ない。まして多少なりとも環境によい品物を買いたいという意識のある消費者が、製品の選択をするのは、多くの場合店頭である。しかしこの頃少しずつは増えてきているというものの、商品の環境情報が的確に店頭表示されていることはまだ多くない。また成分表に化学物質名が書かれていても、それがどのようなものか判断することは多くの消費者にとって困難である。店頭ですぐにわかるしかも信頼できる表示が必要である。ただ前述したようにメーカーや流通事業者が独自に行っても、消費者はあまり信頼していない。国および地域において、メーカー、流通事業者、専門家、グリーンコンシューマーに取り組む環境団体、自治体等が円卓を創り情報公開を保証した議論の上でコンセンサスを得た基準で、推奨する商品を国や地域で共通したわかりやすいマークで表示することが求められている。このような先進例としてはスウェーデンの有機食品ラベルであるKRAVがあげられる。また消費者に直接に対応する流通事業者の店員教育も必要と考えられる。

(5)地域的広がり
地域版ガイドは、その作成した地域においてある程度の影響を与えてはいるが、多くの消費者の行動を変えるまでには至っていない。地域には様々な団体、グループが存在しており、直接には環境問題を目的としたものではないにしても関心がある団体はかなりある。そのような団体にももっと積極的に働きかけともに実行するプログラムづくりなどを実施していく必要がある。また、グリーンコンシューマー活動における自治体とのパートナーシップをもっと充実させていき地域的なひろがりのある活動にしていくことが求められている。

(6)情報の更新
グリーコンシューマーの商品情報や取組み情報は日々変化している。そのため企画、調査、出版に関してある程度の時間が必要となるガイドブックは情報の更新はという点ではあまり適しているとはいえない。ホームページ等を用いた電子媒体がもっとも適しているが、その情報の更新のための調査等の費用と人的確保をどのようにするのかがグリーンコンシューマー活動する団体の大きな課題となっている。

(7) 持続可能な豊かさヘの提案
グリーンコンシューマー活動には、物とエネルギーの大量消費による豊かさから、持続可能な豊かさへのパラダイムシフトがその根底にある。これまで各地で作成されたグリーンコンシューマーガイドブックでは、そのようなことが多かれ少なかれ具体的な情報として入っていた。中心はスーパーなどの店舗情報であった。地域社会において持続可能てかつ豊かな生活をおくるための情報を集め咀嚼したガイド等の情報媒体作成が課題となっており、環境市民ではその企画づくりに着手した。

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