気になるダーバン どうする温暖化防止 その2「そもそも日本の削減目標は?」 | 認定NPO法人 環境市民

気になるダーバン どうする温暖化防止 その2「そもそも日本の削減目標は?」

このコーナーは,2002年から2013年まで環境市民の事務局長を務めた堀孝弘が,在職時に書いたブログを掲載しています。

気になるダーバン会議 どうする温暖化防止 その2そもそも、日本の削減目標ってどれだけだった?

 

《盛り上がらないまま終わるダーバン会議》

「気になるダーバン会議、どうなる温暖化防止」というタイトルで、新シリーズをスタートしましたが、ダーバン会議は世間の関心を集めずに終わりそうです。Googleで「ダーバン会議」と検索しても、4番目まで2001年に開催された「反人権主義、差別撤廃」をテーマにした別の会議が出てきます。COP17ダーバン会議はようやく5番目に出てきます(1210pm10:00現在)。

また、ダーバン会議の会期中、1997年のCOP3京都会議の議長国だった日本の環境大臣から出た「京都議定書に代わる新しい枠組みを」の発言に、途上国やNGOから「京都議定書を葬るな」との声があがっています。「京都で決めよう。市民大行動」をはじめ、14年前(1997年)の市民行動に参加していた者として、やるせなさも感じます。

 

《いくつもの目標数値が出てきてややこしい》

さて、ダーバン会議では「2020年以降に新枠組みをスタートさせる」ということで合意しそうですが、ならば「2013年から2020年はどうするんだ?」などの疑問もわきます。しかしその前に「そもそも日本の温暖化効果ガスの削減目標って、どれだけなんだ。6%だと思っていたら、25%50%などの数字も出てきて、よくわからない。」という人もいるかと思います。今回は、そこを整理したいと思います。

 

《京都議定書での削減目標は変わっていない》

199712月の京都会議(COP3)で採択された京都議定書では、二酸化炭素(以下CO2)をはじめとした温暖化効果ガスの排出量を、1990年と比較して、2008年から2012年の間(第1約束期間)の平均で6%削減することが日本の目標となりました。

この目標値自体は変わっていません。京都議定書からアメリカが脱退するなど、紆余曲折がありましたが、20052月ロシアの批准で、京都議定書が正式に発効し「6%削減」は世界との約束になりました。しかも、現在も「約束期間」の最中で、この目標を履行するため努力しなければならない期間であることも強調しておきます。

 

6%CO2の削減目標ではない》

たまに勘違いしている人がいますが、この「6%」は「CO2の削減目標」ではなく、メタンやハイドロフルオロカーボン類(HFCs、代替フロンなど)、亜酸化窒素など、6つの地球温暖化効果ガスを合わせた削減目標です。ただ、6つのガスのなかでCO2の排出量が圧倒的に多く、影響も大きいことから、CO2の削減が京都議定書に定められた目標を達成できるかを左右するといってよいでしょう。

また、国内の温暖化効果ガスの「排出を減らす」だけでなく、「森林に吸収させる」「途上国の排出削減に協力する」「目標以上に排出を減らした国から排出権を買う」などの方法も認められています。

 

《目標がわかりにくいのは》

では、なぜ「日本の目標がわかりにくい」のでしょう? まずはこの6%削減という目標は、国際交渉のなかで合意した政治的なもので、かつ2012年までの短期的な目標であります。一方、地球温暖化を最小限に食い止めようとすると、長期的な目標として2050年までに世界の温室効果ガス排出量を半減させる必要があるといわれています。この「2050年世界で半減」は、2007年ドイツのハイリゲンダムで開催されたG8サミットで“検討すること”が合意され、翌年の洞爺湖サミットで「合意」されました。

さらに「2050年半減」を実現しようとすると、中期目標として2020年頃25%削減が必要であること、また「2050年世界で半減」を実現しようとした場合、今後も人口が増え、これから生活水準を向上させないといけない途上国が、すでに物質的に豊かになっている先進国と一律に「半減」できるものではありません。仮に途上国が現状維持であれば、先進国は80%以上減らす必要があることなどから、様々な数字が出てきて、わかりにくくなっています。

ただ、京都議定書で国際的に約束した削減目標は、前述のように6%で、これは変わっていません。

 

《さらにややこしいのは》

2009610日、当時の麻生首相が「2020年までに、2005年比で15%減」という目標を示しました。この「目標」には多くのカラクリや問題がありますが、別の機会に取り上げます。

そのわずか3ヶ月後、政権交代を受けて登場した鳩山首相が「2020年までに、1990年比で25%減」という目標を示しました。一般市民から見れば、ますますわかりにくくなったと思います。鳩山元首相が示した目標は意欲的な面もあるのですが、原発推進によるCO2削減に大きな期待を寄せていたり、外国からの排出権購入に依存していたり、やはり問題をはらんでいます。これも別の機会に取り上げます。

 

気になるダーバン どうする温暖化防止 その2「そもそも日本の削減目標は?」以上

 

写真は、1997年京都で開催されたCOP3に向けて活動していた気候フォーラム(現気候ネットワーク)が作成していたチラシや会報。環境市民所蔵資料の一部。