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「食」でできる省エネ 第3回「旬の野菜を選ぶことの環境効果」

カテゴリ:元事務局長 堀のブログ|更新日:2012年6月17日

このコーナーは,2002年から2013年まで環境市民の事務局長を務めた堀孝弘が,在職時に書いたブログを掲載しています。

「食」でできる省エネ 第3回「旬の野菜を選ぶことの環境効果」
〜原発止めてもCO2を増やさない暮らし・社会へ〜

「旬の野菜の利用はエコロジー」の実態を知ろう

 日本は四季の変化がはっきりしていて、特に農産物はそれぞれの地域や季節に適した作物が栽培・収穫されてきました。本来の旬に栽培し収穫された作物は、旬以外の季節に、ビニルハウスやガラス室などを用いた栽培(以下、施設栽培)のように、多くのエネルギーを使わなくて済みます。そのため「旬の食材を選ぶことはエコロジー」と、よく言われています。
今回は、野菜の旬の実態や、環境負荷を少なくする効果などについて紹介します。

 

夏野菜が、冬でも当たり前に出回るようになった。

 「夏野菜が冬でも出回るようになった。」「どの野菜の旬が、いつだったかわからなくなった。」などの声をよく聞きます。実感として感じるだけでなく、図1が示す通り、ビニルハウスやガラス室などを用いた施設栽培による農作物生産が増えています(花きを含む)。ただし、1990年以降は、ほほ横ばいになり、増えていないことにも注目してください。

図1 ハウス・ガラス室等 施設栽培の普及

 

旬の露地栽培と施設栽培で必要とするエネルギーの差

 施設栽培によって、季節に関係なく作物を生産するために、余分に必要とするエネルギーは、どれだけになるのでしょうか。少し古い資料ですが、1990年に社団法人資源協会が出した「家庭生活のライフサイクルエネルギー」によると、例えば、きゅうり1kg生産するのに必要なエネルギーは、露地栽培の夏秋採りの場合、996kcalですが、ハウス加温栽培の冬春採りでは、5,054kcal必要と紹介されています。両者を比べるとその差は約5倍になります。つまり、余分に必要なエネルギーは1kgあたり約4,000kcalということになります。

図2 作物1kgをつくるのに必要なエネルギー

 

 施設栽培で余分に必要なエネルギーは、数倍から10倍

 先ほど引用した「家庭生活のライフサイクルエネルギー」には、1kgのトマトの生産に必要なエネルギーとして、冬春採りのハウス加温栽培は4,241kcal、同じく冬春採りの温室栽培は11,948kcalが必要であることが紹介されています。トマトの場合、露地栽培はほとんどなく、夏秋どり“ハウス無加温栽培””との比較になります。
トマトの夏秋どりハウス無加温栽培に必要なエネルギーは、1kgあたり1,176kcalと紹介されています。これとくらべて、冬春どりのハウス栽培は約4倍、温室栽培は約10倍の差があります。。
ピーマンは露地栽培で夏秋採りの場合、生産に1,058kcal必要であるのに対し、ハウス加温栽培・冬春採りは10,458kcal必要とのことで、その差は10倍にもなります。
旬に露地栽培された野菜と比べて、旬以外の季節にハウス等を用いて加温栽培された野菜の生産には、数倍から10倍近いエネルギーが追加的に必要であることかわかります。

 

 より新しいデータと比較検証しておきます…

 「家庭生活のライフサイクルエネルギー」は1990年に出たもので、「少し古い」と表現しましたが、ちょっと古過ぎます。機材・設備の省エネ化も進んでいるかもしれませんが、残念ながら社団法人資源協会は現在はなく、継続した調査データがありません。実際の農家で、どれだけのエネルギーが使われているのか、少しでも新しいデータがないか探してみました。
群馬大学教育学部の西薗大実教授が、2008年に同大学の紀要に掲載した「トマト生産における加温エネルギーのバイオマス導入についての一考察」という論文によると、群馬県内のトマト農家17戸の調査結果として、施設栽培の場合、トマト収穫量1kgあたり平均で13,500kJ/kg、最大47,000kJ/kgから最小8,000kJ/kgのエネルギーを投入しているとのデータが紹介されています。
1kJ(キロジュール)は約0.2389 kcal(キロカロリー)に相当します。この換算値で先のデータをkcalに換算すると、平均が3,225kcal/kg。最大11,228kcal/kgから1,911kJ/kgとなります。栽培条件や使用燃料など条件は違うと思いますが、先に紹介した「家庭生活のライフサイクルエネルギー」のデータと大きな違いがありません。そのため、以下の試算でも、「家庭生活のライフサイクルエネルギー」に掲載されたデータを活用します。

 

冬に、夏野菜のサラダを1皿食べると…

 旬はずれの野菜を使うことで余分に必要なエネルギーを、実際のメニューで考えてみましょう。もし、冬にハウス加温栽培によって得られたきゅうり(1本の半分・50g)、トマト(半玉・100g)、ピーマン(20g)をサラダに用いた場合、旬に露地栽培によって得られた野菜と比べて(トマトは夏秋採りハウス無加温栽培との比較)、栽培に必要なエネルギーは、トマト約300kcal、きゅうり約200kcal、ピーマン約190kcal、合計690kcalが追加的に必要になります。
トマトは温室*栽培とハウス栽培で必要なエネルギーに大きな開きがあります。トマトを温室栽培のものに入れ替えると、先の合計数値は1,470kcalに跳ね上がります。サラダに用いた施設栽培の野菜が、トマト、きゅうり、ピーマンの3種だけでも、夏秋に収穫されたものと比べて、余分に必要なエネルギーは1,000kcal前後(700〜1,500kcal)になります。
*温室 強固な鋼材を使用し、その外面をガラスで被覆した構造をとる。

図3 サラダ1皿分の野菜を作るのに必要なエネルギーの差

 

前回の「食品ごみのカロリー」と比較すると…

 「食と環境」シリーズの前回(第2回)、食品ごみの特集で、1日1人あたりの供給熱量と摂取熱量の差から、1日1人あたり約720kcal相当の食品ごみが発生しているとの試算を紹介しました。ただし、食品ごみの約3分の2は、食品加工事業者や外食産業などで発生しています。そのため、もし家庭から出る食品ごみを半減させたとしても、その削減効果は、大雑把に考えて720kcalの6〜7分の1程度になります。
このことを考えると、先ほど紹介した「サラダ1皿分、旬はずれの野菜を利用すると、余分に必要なエネルギーは1,000kcal前後」というのは結構大きな数値に思えます。

 

1,000kcalを電気エネルギーに換算して、身近な電化製品を動かすとすると

 このカロリーを電気エネルギーに換算して、身近な電化製品を動かすと、どれだけの時間動かすことができるでしょう。図4を見ていただくとおわかりのように、液晶32V型テレビで26.5時間。テレビの消費電力は1日4.5時間視聴するとして計算されますから、5〜6日分に相当します。400リットルクラスの冷蔵庫の場合、1日半動かすことがてきます。

 こまめな節電を実践している人が、真冬に夏野菜のサラダを1皿食べただけで日頃の努力が吹き飛んでしまうのです。

 図4 1,000kcalを電気エネルギーに換算し、電化製品を動かすと、どれだけ動かすことができるか

 

ただ「旬の野菜の利用はエコロジー」には、但し書きも幾つかある。

 ただし、これも幾つかの「但し書き」があります。
・旬はずれに供給される農産物のすべてが、施設栽培で作られているわけではない。
・夏には夏野菜が出回るため、先に例示したような環境効果が期待できる季節は限られている。
・冬に、冬野菜を利用することで、ここまで紹介した環境効果が期待できるが、冬野菜の利用が大きく減っている。
この他、図2のグラフで示しているように、ハウス栽培でも「無加温栽培」の場合、露地栽培と比べて必要なエネルギーがほとんど変わらないことにも注目してもらいたいと思います。しかしながら、そのような栽培方法の違いが店頭の商品表示でわからないことも問題かと思います。
さて、これ以降、施設栽培の高い野菜がどれか明らかにし、冬野菜をはじめ、おもな野菜の消費がどのような変化をとげているか、見ていきたいと思います。


ハウス栽培など施設栽培比率の高い野菜はどれ?

 施設栽培への依存率は野菜によって違います。農林水産省「野菜生産出荷統計」によれば、トマト、きゅうり、ピーマンは、それぞれ7割前後が施設栽培によって生産されています。特にトマトは、1975年から2001年までのほぼ四半世紀で施設栽培比率が3倍近く高くなっています。なすについては、2001年の施設栽培率が36.8%であり、先にあげた3品種と比べると高くはありませんが、比率は四半世紀で2倍以上に高くなっています。一方、かぼちゃおよびレタスの施設栽培比率は2〜3%であり、「ほとんどない」と言ってよいでしょう。
かぼちゃ、ブロッコリー、レタス、キャベツなどは、施設栽培ではなく、産地と収穫期を分散させることで、1年中供給されている作物です。施設栽培以外にも季節はずれの野菜の供給方法があります。

表1 おもな野菜の施設栽培比率

野菜の消費の変化

 1970年以降の40年間、野菜の消費にはどのような変化があったのでしょう。表2は、東京都中央卸売市場に入荷した野菜のうち、独立行政法人農畜産業振興機構の『野菜統計要覧』V-2「東京都中央卸売市場の月別入荷量の推移」が取り上げている16種の野菜の年間入荷量です。このなかには、小売店に卸され、消費者が店頭で購入する生鮮野菜の他、飲食店に卸され外食の材料となるもの、また、外国産の野菜も含まれています。そのうち1970年、1990年、2009年のデータを抜き出しました。
直近の2009年の他、1970年と1990年を取り上げたのは、ほぼ20年間隔であり変化が見やすいこともありますが、1970年は施設栽培の普及が本格化し始めた時期で、それぞれの野菜の本来の旬がまだ残っていると思われること、1990年は図1で示したように、施設栽培が普及しきったとみなすことができる時期であること、このような理由からです。

表2 野菜の消費の変化

それぞれの野菜の消費の変化 施設栽培比率の高い野菜

 表2と同じデータを用いて、おもな野菜の消費の変化を詳しく見てみましょう。東京都中央市場への月ごとの入荷量をグラフにしてみました。施設栽培比率の高いトマト、きゅうり、なす、ピーマンの4種をみてください。青い線は1970年の月ごとの入荷量。黒い線は1990年。赤い線は2009年ものです。多少の違いはありますが、1970年はまだ本来の旬の消費が維持されているとして、1990年頃には施設栽培が普及し、本来の旬以外の利用が増えています。一方、本来の旬の利用が減り、2009年にはほぼすべての月で消費が減っています。施設栽培比率の高い代表的な作物は、施設栽培が広まって以降、大きく消費量が減っています。

図5 施設栽培比率の高い野菜の消費の変化

それぞれの野菜の消費の変化 冬野菜の場合

 次に、代表的な冬野菜の消費の変化を見ましょう。ほうれんそうやさといもは、品種改良などで夏に収穫できる品種があらわれ、夏の消費も増えています。しかし、それよりも本来の旬の消費が大きく減り、年間消費量も大きく減っています。特に、はくさいの落ち込みが目につきます。
暖冬や世帯人数の減少などで「鍋もの」をする機会が減ったことなど様々な要因があるかと思いますが、「旬の野菜を利用しましょう」とは、「冬には、冬野菜を利用しましょう」と、ほとんど同義語だと言えます。

図6 冬野菜の消費の変化

それぞれの野菜の消費の変化 キャベツとかぼちゃ

 最後に、キャベツとかぼちゃを見てもらいましょう。この2つは先ほど「施設栽培はほとんどない」と紹介した野菜です。キャベツは旬のピークに変化はありますが、年間の消費が平準化され、消費量全体で見ても、ほとんど減っていません。よく知られているように、キャベツやブロッコリー、レタスなどは、産地と収穫期を分散させることで通年供給を可能にした作物です。
かぼちゃも遠距離輸送で通年供給を可能にした作物ですが、図7を見てもらうとおわかりのように、海外からの輸入によって通年供給されています。これもよく知られているように季節が正反対の南半球のニュージーランドやトンガなどが主な輸出元になっています。
かぼちゃについて、ひとつ注目してもらいたいのは、本来の旬である夏はほぼ国産でまかなわれていますが、旬と反対の2月や3月の利用の方が多くなっています。当然ほとんど輸入に頼っています。「何の旬がいつだったか」そのような情報も、立派に環境情報になります。
海外も含めて、産地と収穫期の分散による通年供給は、冷蔵技術や輸送網の整備などによって可能になりましたが、この場合、地産地消など「より近い産地の産品を利用する」と組み合わせて考えるのが良いと思います(地場産品については、次回取り上げます)。

図7 キャベツとかぼちゃの消費の変化

図8 かぼちゃの国産・輸入比率

 

まとめ

・「旬の野菜の利用はエコロジー」が最も効果を生むのは冬。「旬の野菜を利用しよう」は、「冬には、冬野菜を利用しよう」と言い換えてもよい。
・冬に夏野菜を利用すると、余分に必要なエネルギーを電気エネルギーに換算すると、コマメな節電効果を簡単に吹き飛ばしてしまう。
・ハウス栽培やガラス温室などの施設栽培の比率が高いのは、トマト、きゅうり、なす、ピーマンなど限られた作物。これらは通年供給されるようになった後、消費が減っている。
・ハウス栽培でも、「無加温栽培」の消費エネルギーは露地栽培と大きな差はない。
・施設栽培以外にも、品種改良(新品種投入)や遠距離輸送など、旬以外に野菜を供給する方法はあるが、利用量を維持しているのは遠距離輸送。他の2つの供給方法による野菜の消費は減っている(旬はずれに栽培することによる味や栄養素の低下も要因として考えられる。詳しくは文末の参考文献を見てください。)。

 2011年3月の大震災による原発事故をきっかけに、2012年初頭には、全国すべての原発が止まろうとしています。全国的に節電が強く求められています。一方、火力発電の比重の増大は大量の化石燃料を必要とします。節電は節電で取り組むとして、「食」の環境配慮が大きな省エネルギー効果を生むことに対して、今まで以上に注目されてよいのではないでしょうか。

 

「食でできる省エネ」第3回以上 本稿は2012年3月に掲示しました。

 

  第2回「食べ物ごみの実態」も、ぜひご覧ください。http://www.kankyoshimin.org/modules/blog/index.php?content_id=192

今回の報告は、筆者が京都精華大学紀要39号に書いた下記論文をもとにしています(おもに2章)。詳しくは下記URLからダウンロードしてください。

旬の野菜の選択による環境配慮効果と主要野菜の消費実態
www.kyoto-seika.ac.jp/event/kiyo/pdf-data/no39/hori_takahiro.pdf

 

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